唯一?の合気道マンガと思われる武富智の「EVIL HEART」を読んだ。
ヤングジャンプ誌上では打ち切りされながらも、続巻を描き続けて、最後まで書き切った。

内容は、最初はありがちな学園喧嘩マンガストーリーかと思いきや、
「暴力」というどうしようもないものに対して、
どうすればよいのかを真摯に時に残酷に、時に美しく表現している。
喧嘩マンガはある意味喧嘩や戦うことに意味を見出すのが本筋だろう。
それに対し、そもそも合気道には試合はないだろうし、目を引く派手な攻撃方法なんかもあるわけない。
題材としては、マンガ家だったら、それは誰も採用したくないだろう。
確実にウケない。
だから、打ち切りという結果になっているのは、当然。
しかし、読後、これは1つの美術作品であると思えた。
ドラゴンボール、ワンピースのような大衆マンガにない、高い作品性を持っている。
作者は合気道の経験者なのかわからないし、なぜ描こうと思ったかもわからないが、その内容、心意気は素晴らしい。
連載誌では、商売にならないから、こういう「最初は見せ場がない」「最後に完成する」ような内容はまず続けさせてくれないだろうが・・・そこにはもどかしさというか矛盾を感じずにいられない。
内容の感想を書くと・・・
暴力には、目まぐるしく動く心情、騒音、無秩序があるのに対して、合気道には、静寂、美、秩序がある。
そんな対照的なシーンに、心を動かされずにいられない。
たぶん、合気道や合気を知らなくても、日本人なら同じ感覚、においを感じるはず。普通に感動できる。
「友達も敵も自分がつくるんだよ。素敵だろ?君の国の武道」
「絶対不敗とは、絶対争わないこと。強くなりたいなら争ってちゃ駄目だよ」
「人を動かすのは力だけじゃない」
「空っぽになればまた何かを受け止められる。未来の過去は今だ。今日こそが明日」
「無抵抗主義には大なる修行がいる!しかし心を結ぶには三月で足りる。怖がらんでいい。己を知る事を怖がってちゃ始まらん」
「目の前の壁をなんとかするのは合気道じゃない。"人"だと」
あやまること、頼ること、あきらめること・・・それは強さなくてはできない。とくに自分の得意分野であればなおさら。
自分とこだわりを捨てることにはとても、エネルギーと長い時間がかかる。増してや、己の状態を知ることはもっと難しい。
作者なりの答えを提示している、話の結末は圧巻。
みんな気軽に是非、読んで欲しい話。
[0回]
PR